2010年3月29日 (月)

歯は咬合時に動いています。 その3

変位の話の続きをしていこうと思います。


お話しているように、歯は咬合時にある一定の方向へ動くことが報告されてきているのですが、

歯の咬合面の、荷重を加える位置によって動き方が変わることも報告されています。


たとえば上顎第一大臼歯の頬側1点に荷重を加えた場合と口蓋側1点に荷重を加えた場合には動く方向も量も異なります。


基本的に頬側1点のみで咬合させたときの方が口蓋側1点で咬合させたときよりも大きく変位します。

口蓋側1点で咬合させたときには咬頭かん合位の際の変位に近い動き、すなわち口蓋側あるいは口蓋側歯根方向へ変位し、頬側の場合には頬側方向への成分が多くなることが確認されています。


このような差が生じることには、頬側と口蓋側の歯槽骨の厚みの差が原因していると考えられています。


健常者の咬頭かん合位やタッピング時の変位の方向を正常とした場合に、それとは異なる方向へ変位することは歯周組織との調和を乱し、咬合性外傷につながる可能性があると考えられています。


つまり、歯根の形態、骨の形態や厚みなどの解剖学的形態と歯周組織の粘弾性には関係があり、これらの両者から、咬合面上の力を加える(咬合力が加わる)位置を変えることで、歯の変位の方向や量に違いが生じるのであろうと考えられています。


ゆえにどこに力が加わるとどのくらいの量どう動くということを把握した上で咬合調整を行うことは、歯周組織と歯の調和を目指すときに不可欠であろう、ということで、私も日々測定に解析に励んでいる状況です。



大雑把に説明させていただきました。


また随時ご紹介させていただけたらと思います。


オオタケデンタルオフィス 小椋麗子  www.o-dent.com

2010年3月26日 (金)

審美、自然美、前歯のインプラント

先週土曜日に、ドクター6名参加のインプラントオペがありました。

CTによるシミュレーション、骨造成、意図的な歯の不整などのとても興味深い手術となりました。

お集まりいただいた先生方、ありがとうございました。

 

私の所属する研究会グループでも、骨の造成に関するマテリアルの選定について、いろいろな意見がありますが、今回は、ブロック骨自家骨移植と、チタン補強のメンブレンで骨の造成を同時に行いました。

 

前歯のインプラントは、骨の形態の難しさだけでなく、歯肉の膨らみや、歯冠部分の位置の想像など、とても緊張するものですが、やはり多くの先生と検討しながらのオペは安定的です。

 

4ヶ月後の歯肉移植の際にも、チームで取り組みたいです。

 

 

大竹貫洋

2010年3月 1日 (月)

歯は咬合時に動いています。その2

本日もまた、歯の変位の続きをご紹介していこうと思います。

 

 

前回お話したように、正しい咬合調整のゴールを求めて歯の変位の研究が始まりました。

 

 

咬頭かん合位における噛みしめ時に、上顎臼歯は主に口蓋方向あるいは口蓋側歯根方向に、下顎臼歯は舌側方向へ変位をすることが報告されています。

 

 

つまり咬合する時に上下顎の歯列弓が小さくなるように、すなわち各歯のコンタクトが密になるようにそれぞれの歯は動いているのです。

 

 

この歯の変位量は咬合力が増加するにつれて大きくなりますが、その関係は正比例の関係にはなっていません。

 

 

まず、1kg以下のわずかな荷重量で歯は大きく変位し、その後は緩やかに変位量が増加します。

最初の急激な変化は歯根膜の変形に起因し、それ以降の緩やかな変化は主に骨の歪みに由来していると考えられています。

 

 

このようにほんの小さな力で歯が大きく変位することも、口腔内と石膏模型の咬合接触状態が異なることの一因となっているのです。

 

 

また、前述のように歯が変位することは、上下顎臼歯の位置関係が咬合力が増加するにつれて変化する可能性があると考えられ、噛みしめ強さの変化によって咬合接触点がどう変化するかということを調べた報告があります。

 

この報告に関してはまた後日お話させていただければと思います。

 

 

オオタケデンタルオフィス 小椋麗子